中川敦史●ヴァイオリン

いつもモーツァルト管弦楽団にあたたかい声援をいただきありがとうございます。第2ヴァイオリンの中川です。プロとしての演奏歴は17年を数えるようになりました。ヴァイオリンとの付合いは親のすすめで始めた5歳の頃にさかのぼります。近くに分数楽器を持った方がいらっしゃったのと教室があったことがきっかけですかね。

好きな楽曲はR.シュトラウスの歌劇「ばらの騎士」組曲です。最初に某オーケストラでオペラ全3幕を演奏して、ストーリー展開もすごく興味深かったのですが、なにより音楽が素晴らしい印象でした。技術的にとても難しい曲でしたが、そのメロディーの美しさや躍動感に心踊りながら弾いたのを覚えています。その後、アマチュアオーケストラのコンマスでこの組曲のソロを弾かせていただいたのもあってますます好きになり、さらに第2ヴァイオリンやヴィオラでも弾く機会があって、その度にオペラのシーンを思い浮かべ楽しんで演奏しています。

尊敬する音楽家は沢山いますが、一人上げるとすれば師でもある景山誠治氏です。友人の勧めから講習会でついたのが出会いで、柔らかい右腕から奏でられる色っぽい音に釘付けになりました。レッスンももちろん素晴らしかったのですが、それ以外の時間でもとてもフランクに接してもらってなんでも話せてしまう、そんな親しみやすいところに惹かれました。

演奏で心がけていることは、発音を意識して少ない力で音を遠くに飛ばせるようにすることです。無駄な力を抜くためにヴィオラや古楽器を弾くことで気づくこともあります。またヨガをやって呼吸や丹田を意識できるようになり、少しは全身をうまく使えるようになったかなと思います。

この楽団での演奏は6年目を迎えました。いずみホールと天満教会という素晴らしい会場にそれぞれ見合った編成で音楽をお届けできるのがこの楽団の大きな特長です。個々に素晴らしい音楽家が集まって集中力を持ってリハーサルに臨んで短期間で音を作り上げていく過程はとても充実した時間です。この編成だからこそできる表情の細やかさみたいなのを味わってもらえればと思います。

わたくし自身は本番中に閃き感じたものを大事にして、無理なく音楽をコントロールするということはもちろんですが、より自然に音楽が流れる方向に導けるように瞬時の判断力を身につけていきたいと思っています。

これからもその時その時にベストを尽くしていきますので、応援のほどお願い申し上げます。

 

<経歴>

 

京都市立芸術大学音楽学部卒業、同大学院修士課程修了。全日本学生音楽コンクール大阪大会高校の部入選。第4回熊楠の里音楽コンクール大学生の部第1位。大学から助成金を得てドイツ・ブレーメン芸術大学に留学。

京都・若い作曲家による連続作品展、日独現代音楽演奏会等に出演。また古楽器による演奏会にも多数出演。

岡山フィルハーモニック管弦楽団ヴィオラ奏者。京都バロック楽器アンサンブル、バロックアンサンブル「ラ・ルーナ」各メンバー。

関西を中心にヴァイオリン及びヴィオラのフリーランス奏者としてソロ、室内楽、オーケストラと幅広く活動。

 

髙橋  博●クラリネット

モーツァルト室内管弦楽団でクラリネットを演奏している髙橋です。

クラリネットとの出会いは中学1年生の春、初めから吹奏楽部に決めていたにもかかわらず入部が人より1週間ほど遅かったので希望のトランペットかトロンボーンは満席、顧問の先生にこれでも吹いとけと渡されたのがたまたまクラリネットだったのです。それはガタガタでタンポも傷み隙間が開いているような楽器でした。

それでも超初心者の私はただただがむしゃらに練習していましたが、うまくなりたいと思ったきっかけは先輩がくれたカセットテープでした。それにはレオポルド・ウラッハのモーツァルトのクラリネット協奏曲と5重奏曲が入っていました。今でこそ多くの素晴らしい演奏が簡単に聴けますが、当時その演奏を聴いて、なんてまろやかできれいな音なんだ!こんな音が出せるようになりたい!中学1年生ながら大変感動したのでした。

その後、レコードや演奏会でクラリネットの演奏を聴いてきましたが、好きになる音はベルリン・フィルやウィーン・フィルのクラリネット奏者に代表されるエーラーシステムの演奏家が多かったです。私自身も日本の音大を卒業後にエーラーシステムに転向し、ドイツのケルンへ留学し、帰国、現在に至っています。

 

好きな楽曲はモーツァルトはもちろん、沢山ありますが、クラリネットの曲では、中でもブラームスのクラリネット3重奏曲とクラリネット5重奏曲が好きです。クラリネットの広い音域と柔らかい音色を活かした、光と陰影、メランコリックでロマンチックで、深い味わいを感じられるところがグッときますね。

オーケストラの曲でも多過ぎて挙げきれませんが、例えばボロディンの歌劇《イーゴリ公》より「ダッタン人の踊り」、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」、グラズノフのバレエ音楽《四季》より「秋」など、あとラヴェルの作品なども好きです。

秋と言えば、夏が終わって初秋に金木犀の芳りが漂い始めると毎年ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」が頭の中を流れます(笑)。ブラームスも秋に聴きたくなりますね。

これらの曲が好きな理由は、メロディーがきれい、転調がきれい、そしてロマンチックだからです。

クラシック音楽から休憩したいときには、ジャズやボサノヴァを聴くのが好きです。

 

尊敬する音楽家はミッシャ・マイスキー氏です。圧倒的な表現力、パワフルでスリリング、生き生きとしていて豊かな表情、歌い方、ヴィヴラート、全てが最高です!彼の壮絶な人生、才能、すごいです!

クラリネット奏者ではヴェンツェル・フックス氏です。艶があって中身が詰まった豊かな響きが、高いテクニックで華麗に自由に表現されているあたり、憧れであり目標ですね。

それからマテ・ベカヴァック氏、超絶技巧の持ち主で、響きがきれいでよく歌い音楽的、それらを簡単にやってのけるすごい奏者です。

ジャズクラリネット奏者ではエディ・ダニエルス氏ですね。音がきれいで楽器が自然に響いていて、ソルフェージュがすごくって音ムラがなくなめらか、センスが良くオシャレなところが大好きです。

自分の演奏では特にこの時にうまく出来た、というのはないですね。うまく出来るよう毎回頑張っていますが、いつも満足できず課題が残ります。あるいは一番うまく出来たという実感に近いものがあったとしても、次回にそれを超えるように常に考えています。

去年出来なかったことが今出来るようになっている、今より来年の方が上手くなっている、というのが目標です。

 

演奏に向かう時には、まず良い響きで吹きたい、ということがやはり一番です。つぎに表現、キャラクターなどを大切に考えて演奏しています。

吹いている楽器のメーカーはヘルベルト・ヴーリッツァーで、システムはエーラー式です。自分のいうことを聞いてくれるようになるまで相当骨が折れますが、この楽器の良さが出せたときの響きが好きなのです。この楽器を使って自由自在に吹けるようになることが目標です。

演奏技術は当然とても大切で、いくらあっても困らず沢山欲しいのですが、音をただ完璧に並べただけの演奏ができたとしても、そこに留まることなく音楽表現のために技術を磨いていきたいと考えています。

パソコンなどで音を打ち込んで再生すればいくらでも正確な音程で速い演奏が可能でしょうけれど、聴くのはあくまで人。聴く人の感性に響く演奏がしたいと考えています。

 

モーツァルト室内管弦楽団での演奏活動も18年になりました。この楽団には門先生が信頼している、一線で活躍している経験豊富な演奏家が集まっています。練習時間や練習場所など色々な制約がある中、集まったメンバーはすごい集中力と洞察力で、門先生の表現されたい音楽を共有し実現しようと一生懸命努めています。

初回の練習、次の練習、ゲネプロ、どんどん変化していき、本番では一番良い結果を出しているところは、本当にプロフェッショナルな団体だなと思います。

モーツァルト、というベースだけに留まらず、ベートーヴェンシリーズやフランス音楽シリーズ、懐かしのクラシックなど、また演奏会形式のオペラや合唱曲など、様々な演目や企画で音楽を楽しんでいただければと思います。

さらに、いずみホールという、室内オーケストラが演奏するのに最高のホールで定期演奏会を行なっているので、その点でも楽しんでいただけるかなと思います。

みなさまにも、こんな曲を演奏して欲しいとか、こんな企画でやって欲しい、というものがございましたら、気軽にリクエストしていただきたいです。

 

ある高名なハンガリーのヴァイオリン奏者に「良い音楽家になるにはどうしたら良いですか」と質問したところ、「一つは楽器をよく知ることだ。もう一つは音楽をよく知ることだ」という、とても深い、有り難い助言をいただきました。どれだけできるかは別にして、私の座右の銘とさせていただいています。楽器の良い響きを大切にしながらいかにテクニックとコントロールを身に付けるか、そしていかに考えいかに表現しいかに音楽を伝えるか、ということをいつも模索しています。

みなさん、これからもモーツァルト室内管弦楽団にご声援をお願いいたします。

 

<略歴>

 

大阪音楽大学、ドイツ国立ケルン音楽大学大学院を優秀な成績で卒業。クラリネットを小川哲生、村井祐児、鈴木豊人、故フランツ・クライン、ラルフ・マノーの諸氏に師事。帰国後は多数の主要オーケストラに客演する傍ら、室内楽演奏会やジョイントリサイタル等多数開催・出演している。2001年サイトウ・キネン・オーケストラメンバー。現在、モーツァルト室内管弦楽団、エウフォニカ管弦楽団、京都バッハゾリステンのメンバーとして各地で演奏活動を行なっている。ドルチェ・ミュージック・アカデミー講師。

 

南出信一●コントラバス

みなさん、いつもモーツァルト室内管弦楽団に温かいご声援をいただきありがとうございます。コントラバス奏者の南出です。プロの演奏家になって42年。この楽器を選んだ理由は特にありませんが、あえて言うと高校の先輩に勧められて、そのままずっとという感じです。

この楽器を弾いていることがきっかけで、尊敬する音楽家は、コントラバス初のソリストと言われるゲイリー・カーです。みなさんにもぜひお聴きいただきたいのですが、彼は世界で一番素晴らしいコントラバスの演奏家で、深いサウンドと神業的な技術と音楽性を持っています。音の低さや機敏な演奏がしにくいこと、さらにくすんだ音色のために独奏には向いていない楽器とされていたコントラバスを、ゲイリー・カーはその技術的な困難を克服し、魅力あるソロ楽器として印象づけた功労者と言ってもいいかと思います。

コントラバスを弾く時の私の演奏法の特徴は、他のコントラバス奏者より弓を使う量が少ないことです。そして常に弓の速度に関心を持ちながら比重の重いサウンドで演奏することを心がけています。これまでの演奏を振り返ってみると、バロック音楽の通奏低音を演奏するときが一番自分の中では良い演奏が出来ている気がしています。

モーツァルト室内管弦楽団ではかれこれ20年メンバーとしてやってきました。この楽団は、大掛かりな編成ではなく、モーツァルトが活躍していた当時に行われていたであろう演奏形態で演奏していることが特長ですね。そして演奏会場もほとんどが関西で一番それに適した「いずみホール」で開催されているのは、演奏者にも来場者にも素晴らしいことだと思っています。楽団の50周年も近づいてきました。これからもオーケストラやアンサンブルの中で、自分にも、他のメンバーにとっても心地よいコントラバスのサウンドと役割を追求していきたいと願っています。皆さまのご声援よろしくお願い申し上げます。

 

<経歴>

京都市立芸術大学音楽学部卒。テレマン室内管弦楽団に20年在籍。現在、モーツァルト室内管弦楽団のメンバー。

 

大西由紀●トランペット

みなさんいつもモーツァルト室内管弦楽団に温かいご声援をありがとうございます。
楽団でトランペットを担当させていただいている大西です。この楽器に触れるきっかけは、小学校5年生の時に鼓笛隊のトランペットがかっこいいなと、憧れて入部したことからですので、プロ以前を加えるとずいぶん長くトランペットと歩んできたものですね。
トランペットのなかでも特にピッコロトランペットが好きなので、この楽器が活躍するバッハの曲などは聴いていて胸が躍ります。
プロになって20年ですが、モツ管での演奏歴がちょうどこれに重なります。モーツァルトの楽曲は、わかりやすさ、ワクワク感、演奏している時の高揚感など、理屈では言い表せないものがいっぱい詰まっているように感じます。この楽団がすごいなと思うのは、各奏者のみなさんが、短時間の練習で主催者である門先生の音楽観や演奏意図を明確にとらえること、そして本番ではすばらしい集中力でそれを表現すること、この2点でしょうか。いつも、メンバーの一人であることの充実感を味わっています。
まだまだついて行くのがやっとの私ですが、本番での一体感がいつも忘れられないものになっています。指揮者を筆頭に奏者全員が音楽に真摯に向き合ってステージを作り上げています。特に小編成だからこそのアンサンブルをお客様と共有できればと願っています。
私自身としては、演奏する曲を前にして音楽に対しても奏法に関しても、その都度自然にそして素直であろうと考えています。今まで100%納得できた演奏はないかもしれませんが、「まだまだこれから」とチャレンジしていきます。そしてたくさんのオーケストラ曲やソロ曲にも取り組んでいこうと思っています。
これからも皆さまのご声援よろしくお願い申し上げます。

<略歴>
京都聖母学院小・中・高校卒業。京都市立芸術大学および大学院卒業。トランペットを有馬純昭氏に、室内楽を岩崎勇、呉信一の各氏に師事。在学中「京都国際音楽学生フェスティバル」においてJSバッハ作曲『ブランデンブルグ協奏曲第2番」のソリストを務める。現在、フリー奏者としてオーケストラ、アンサンブルで活動中。

佐藤明美●ホルン

モーツァルト室内管弦楽団でホルンの演奏をさせていただいている佐藤です。この楽器を選んだのは多くの人がそうであるように、中学校の吹奏楽のクラブで先生に決められたことがきっかけです。以来約30年間続けています。けっこう相性が良かったのでしょうね、プロになって演奏できているわけですから。

好きな楽曲をあげると、聴いていて好ましいのはブラームスの交響曲1番やドヴォルザークの交響曲8番、チャイコフスキーの交響曲5番などです。それぞれホルンのパートが特徴的で、たくさん練習もし勉強もしたからでしょうか。もちろんモーツァルトも大好きです。演奏するのに技術的に大変難しい曲もありますが、変に力まず心地よく演奏できるので、吹いていて気持ちがいいところが気に入っています。

プロになってほぼ20年でモーツァルト管弦楽団での演奏歴もほぼ同じくらいでしょうか。この楽団が短い練習時間にもかかわらず本番ですばらしい演奏ができるのは、メンバーひとりひとりが集中し、主催者の門先生の向かおうとする方向性を理解できているからではと思います。私の場合はやっとついて行っている感がありますが、それでもこの楽団で演奏することに充実感と満足感を得ています。

はるか昔のことですが、大学時代の試験の際に、時間を決められていたにもかかわらずいつまでも吹いていたいと思ったことが一度だけあります。これが今までで一番うまくできたと実感した演奏の記憶ですが、これからの演奏家としての歩みの中でこれを上回るような感覚を得たいと思っています。

皆さん、ぜひ定期演奏会にお運びください。そして、この楽団の素晴らしい演奏をお楽しみいただければ幸いです。


<略歴>

相愛大学音楽学部卒業。同大学研究生終了。在学中に安田生命クオリティブライフ文化財団より奨学金を受ける。1997年大阪シンフォニカー(現 大阪交響楽団)に入団、副主席を務める。2000年同楽団を退団し、現在フリーのホルン奏者としてオーケストラ、室内楽、アンサンブルなどで活躍。ホルンを野田篁一氏に師事。


道幸明美●ヴィオラ

楽団でヴィオラを演奏している道幸明美です。プロとしての演奏歴は40年弱で、モツ管での演奏歴もほぼ一緒か少し短いぐらいです。


音楽の道に進んだきっかけは、私が3歳の時のお正月に祖父にビールを飲まされて、床の間に立って歌を歌った時、他の3人の姉妹と違って音程が外れなかったから(笑)。中学1年の時に、母にすすめられてヴァイオリンを始めました。それで大学はヴァイオリンを専攻。ところが、2回生になるとヴァイオリン専攻生はみんなヴィオラのレッスンを受けることになり、オーケストラでもヴィオラを弾くことに。それがヴィオラとの出会いです。

ヴァイオリンがきらびやかで華やかなのに対して、地味ではありますが人間味あふれる音色のヴィオラにたいへん魅力を感じました。人の声に最も近い楽器とも言われます。

3回生の時でしたが、親がヴァイオリンを買い替えてくれると言ったので、それならヴィオラが良いということになり、ヴィオラに転向した次第です。


ヴィオラはヴァイオリンより大きいですが同じ演奏スタイルで顎にはさんで弾きます。

私は特に体が大きい方ではないので、オペラやバレエなど長時間の演奏ではたいへん疲れます。とにかく脱力あるのみです。

オーケストラや室内楽など アンサンブルでヴィオラは主に内声を担当します。しかし時にはバスに代わって低音を受け持ったり、たまにメロディが出て来たりします。常にアンサンブルの中での自分の役割をわかって、それにふさわしい弾き方をすることが大切だと思います。

内声では、キザミと言って、8分音符や16分音符で同じ音が延々と続くことも結構多いです。他から見ればつまらないだろうと思われがちですが、このキザミが音楽の流れを引っ張って行くんだ!というくらいの気持ちで楽しんでいます。


とにかくモーツァルトが大好きです。弾いていて本当に楽しいです。

モーツァルトを演奏する時は、他ではなく、やはりこの楽団で弾きたいと思います。

指揮者の門良一さんが、演奏スタイルにこだわり長年モーツァルトの演奏をされてきたのは本当に素晴らしいと思います。最近ではハイドン、ベートーヴェンそしてロマン派の曲へとレパートリーを広げています。時には、こんな曲をこの人数では無理ではないかしらと思うこともあります。それで、我々奏者も一生懸命に取り組むのですが、出来てしまうのがスゴいと思います。

指揮者と小編成でのプレイヤーが一丸となって挑みますので、大編成のオーケストラとはまた違った意味で楽しんでいただけると思いますぜひ聴きに来てください。

私個人的には、これからも何度でもモーツァルトが演奏できると嬉しいです。


<経歴>

神戸女学院大学音楽学部ヴィオラ専攻卒業。ヴァイオリンを故古武滋野、ヴィオラを故三輪長雄の各氏に師事。卒業後20数年間プシケ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者として、など室内楽やオーケストラで演奏活動を続ける



佐伯利之●ファゴット

楽団でファゴットを演奏している佐伯です。この楽器を選んだきっかけは、吹奏楽でサックスをやっていたのですが、オーケストラにある楽器をやりたかったことと、高音楽器よりも低音楽器がやりたかったことですね。もちろん、弦楽器より管楽器に親近感があったことも理由の一端です。

         

楽曲ではフランス音楽が好きです。なかでもラベルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」には、言葉では言い表せない「気品ある美しさ」を感じます。

音楽家では、音楽の道に進もうとする前はフルトヴェングラーが好きでした。音楽の芸術としての素晴らしさを感じさせてくれました。レコードを集めて色々と聴きましたが、「演奏家によって、同じ曲がこんなにも感動的なものになるのか」と大変驚いたのを覚えています。ファゴットを始めてからは「モーリス・アラール」というバッソン(フランス式のファゴット)の演奏に感銘を受け、その音楽的な演奏に魅了されました。


自分の演奏に関しては、単にソロとしてよりはオーケストラや室内楽などにおいて「自己主張と協調性」をバランスよく保つことを心がけています。他の管楽器とあわせたり、チェロやコントラバスと一つになれることは大切です。そのためには「大きな音」「太い音」というより「よく響く音」が必要かと思います。また、周囲の表現のニュアンスにも機敏に対応し一緒に歌を奏でられるように心がけているつもりです。

その意味では、少人数の室内楽や独演よりもオーケストラの中で緊張を強いられるソロがうまくいったときが、一番、充実感がある時かと思います。


プロとしての演奏歴はほぼ30年で、この年月はそのままモーツァルト室内管弦楽団での演奏歴と重なっています。この楽団は、長きにわたってポリシーを崩さず高い質の演奏を保ち続けていることがすごい!それだけでも高く評価されるところだと思いますが、やはり主宰者である門さんのモーツァルトをはじめとする音楽への探究心には驚かされます。そこから一つ一つ演奏会にまで作り上げるのは並大抵のことではないと思います。ですから、実際に奏でられる音楽にもポリシーがあり、説得力があるのではないでしょうか。オーケストラのメンバーも皆さんキャリアがあり、音楽的な主張をしっかりと持っています。門さんの音楽とメンバーの音楽がミックスされる本番は、いつもとても楽しく躍動的です。

楽団のアピールとしては、門さんの音楽が最大だと思いますが、アンサンブル好きなメンバーの遊び心がもっと客席に伝わればと思います。そのあたりをぜひお客様にも一緒に楽しんでいただきたい。これからも楽団の応援よろしくお願いいたします。


<経歴>

京都市立芸術大学音楽学部卒業。卒業後約10年大阪シンフォニカー(現、大阪交響楽団)に所属。大阪、神戸などでソロ、ジョイントリサイタルを開催する。


福田 淳●オーボエ

楽団のオーボエ奏者、福田 淳(きよし)です。あまりメジャーではないこの楽器を選んだきっかけは、中学校の器楽部(オーケストラ)で半ば強制的に決められたためです。以来、演奏し続け、プロとしての演奏歴も30年を数えるようになりました。もっとも、初めて演奏してお金をもらったのはたしか15歳の時だと記憶しています。学生時代から演奏してお金を稼いでいたので、そこからがプロだとするともっと長くなりますね。

 

モーツァルト室内管弦楽団には30年前からの参加ですが、途中10年ほどブランクがあるので、通算は20年です。楽団では、永年馴染みのメンバーで演奏しているので、俗に言う「阿吽の呼吸」で分かり合えることがあります。メンバー相互で「音で会話ができる」のが良さですね。したがって、単なる役割としてのパートではなく「有機的で、自発的な奏者たち」による、活き活きとした演奏をぜひお客様にも楽しんでいただきたいと思っています。

 

楽団では、名前の通りモーツァルトを中心に、ハイドンやベートーヴェンなどを演奏することが多くなっています。当然ですが、これら古典のをはじめバッハなどのバロックは好きな楽曲です。ただ、あえて言えばジョン・ラターの『マニュフィカート』、ガブリエル・フォーレのピアノ組曲『ドリー』をあげたいですね。前者は、初めて聴いた時に心が洗われるような気持になったことから、そして後者は、高校時代にこの曲で初めて四手連弾を知り印象に残ったのと、曲自体が持つ可愛らしさに魅かれたためです。

また、ディヌ・リパッティのピアノ演奏にも強く魅かれていることも加えておきます。

 

尊敬する音楽家としては、やはり同じ楽器オーボエの奏者ですね。モーリス・ブルク、ハインツ・ホリガー、ローター・コッホ、この三人は天才でしかも精神性に優れていると思います。ホリガーは神に近く演奏が多少冷たく感じられるのに対して、ブルクは人間に近く演奏に温かみを感じます。そして、コッホはオーケストラにおける精神性の高さが秀逸ですね。

 

これまでの自分の演奏については、うまく出来たという実感はなくて、いつも「まだまだ下手だなあ」と感じ、反省することしきりです。

ただ、演奏する時に心がけていることは、「『自然』あること」。「喋るとき」や「歩く時」にそうであるように、演奏する時にも「自然でありたい」と考えています。

これは、変わらない自分の姿勢で、今後も、「自然」な演奏ができるように探究、精進していくつもりです。

 

<略歴>

加古川市立平岡中学校卒業・岡山県作陽高等学校音楽科卒業・京都市立藝術大学音楽学部卒業・京都市立藝術大学大学院音楽研究科修了。

大阪シンフォニカー(現、大阪交響楽団)首席、神戸室内合奏団(現、神戸市室内合奏団)を経て、大阪市音楽団(現、Osaka Shion Wind Orchestra )コンサートマスター。

第4回日本管打楽器コンクール3位入賞。第1回淡路島国際室内楽コンクール優秀賞受賞。

 

日野俊介●チェロ

モーツァルト室内管弦楽団の日野俊介です。チェロパートを受け持って5年ほどになります。音楽を一生の仕事にしようと思ったのは、中学三年生のときでしたが、その時は、ギターでと思っていました。ところが、習いに行ったギターの先生が、チェロが大好きで、熱心に勧められたのがきっかけです。ギターはそれ1台で小さなオーケストラとも言われることもある素晴らしい楽器ですが、本物のオーケストラには加われないし、ギターで弾ける大作曲家のオリジナル曲がない。また、他の楽器と一緒にやれる楽曲が少ないなど、結果としてチェロを選んでよかったのかもしれません。

以来、プロとしての演奏歴は30年を数えるまでになりました。これまでもいくつかの楽団に属していましたし、現在も他の楽団でも演奏していますが、モーツァルト室内管弦楽団の特長をあげるならば、自発的なアンサンブルを味わっていただけることでしょうか。オーケストラで演奏している時に、他のパートがどう出るかその瞬間、瞬間の相手との駆け引きを楽しんでいるのを、お客様にも楽しんでいただきたいと思っています。

 

演奏する際に、僕がいつも心がけているのは、プレーヤーにとっては当たり前の事ですが「脱力する」ことです。これを言葉で説明するのは大変難しいのですが、演奏における肉体の運動面は、スポーツにおいて脱力することの大切さと一緒であろうと思います。演奏は、それに「音楽」というもう一つの重要な要素が絡んでくるので、より複雑になります。ただ、書かれた音の本当の意味を少しずつでもわかってくれば、おのずと力も抜けてくるし、逆に、脱力しなければその音の意味は決してわかってこないだろうと思います。

「脱力する」ことで正確さやバランス、音量、造形などさまざまな要素が損なわれても、続けていけば将来おのずと解決すると信じているし、これまでもそれだけを考えてきました。

大作曲家の曲を勉強していると、いかに彼らが「力」と無縁の世界にいるかがイメージできます。だからこそああいう音を生み出すことができるのだと、おぼろげに理解できるようになってきました。

 

好きな楽曲はたくさんありますが、あえて1曲あげるなら、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番 作品132です。最晩年の独特の響きと精神世界に惹かれます。平たく言うと、「苦難を突き抜けて歓喜に至る」という第九の終楽章のようなものですが、この四重奏曲の第3楽章では「病気が治った後の神への感謝」との記述からも汲み取れるように、より内的な小さい世界へと移行してきています。しかし、不思議と音はそれとは逆に、宇宙的な広がりを持つようになるように感じられます。

 

僕は常々、演奏していくということは、自分自身を知ることだと考えています。だから、演奏の出来はそのまま現在の自分で、相当な努力をもってしても本質的にはそう簡単に変わるものではありません。演奏の都度、自分を少しずつ受け入れて行く作業を、あがきながら延々続けていって、その先にきっと何かがあるのだろうと思って、日々演奏しています。

 

今年の10月に、出身校・神戸高校のOBオーケストラでチェロ協奏曲のソロをさせてもらうことになっています(1013(月祝) 神戸文化大ホール)。これまでの音楽生活で、ソロのコンサートも数多くやってきましたが、オーケストラとのコンチェルトでのソロは、昔は全く別物と考えていたのが、最近になってそう特殊なことではないように思えてきました。やる毎にソロとそうでないことは近いものになっています。10月の後も機会があれば積極的に色んなソロをやってみたい。そろそろ、そういう時期かと感じています。

それによって、オーケストラのことと、自分のことがよりわかってくるだろうと考えています。

 

<略歴>

 京都市立芸大卒業。京都音楽協会賞受賞。 神戸室内合奏団、大阪センチュリー交響楽団、いずみシンフォニエッタなどを経て、現在関西フィルハーモニー特別客演首席。 神戸市出身、現在京都市在住。

   

   

本多 智子●ヴァイオリン

ヴァイオリンの奏者を務めさせていただいている本多です。早いもので、プロとしての演奏歴は40年を超えました。モーツァルト室内管弦楽団でも30年を超す団員歴となっています。

モーツァルト室内管弦楽団は、40年にわたる長い歳月を経て、現在までその演奏スタイルを変えることなく演奏会を続けており、日本の演奏団体の中でも稀有な存在だと思っています。この演奏スタイルは指揮者・門良一さんのモーツァルトへのこだわりから生み出されているものでしょう。楽団は、基本30人編成を軸に、室内楽から少し大きな編成の曲まで、また最近ではバロックからロマン派まで活動の幅を広げています。

また、門さんは隠れた名曲の発掘も得意で、演奏者の私もとても興味深く弾かせていただいております。プレイヤーの技量や感性に任せていただくことも多く、そのことでお客様にも大変心地よい演奏空間を味わっていただけているのではないかと思います。門さんの演奏者への尊敬、信頼のなせる業でしょうか。

私自身の演奏に対する考えは、風の音、木々のざわめき、川の流れ、雨の音など自然の声や、人の感情、感性から発せられる内面からの声を、作曲者の意図を組んで表現できればと思っています。とはいえ、なかなか納得のいく演奏ができるのは難しいといつも感じています。日々の試行錯誤の繰り返しでしょうか。素晴らしい指揮者やソリストと協演させていただき、そのオーラに引き込まれ、音楽を同じに感じ、客席との一体感が持てた時は、「なんて幸せなんだろう!」と思います。演奏家冥利につきるとはこんなことをいうのではないでしょうか。

 

<略歴>

相愛女子大学(現・相愛大学)卒業。研究科修了。学生時代からヴィエール・フィルハーモニック(現・関西フィルハーモニー管弦楽団)に約10年間所属。その後、松永みどり弦楽四重奏団第2ヴァイオリン奏者として28年間活動を続ける。モーツァルト室内管弦楽団にも、その同時期に所属し現在に至る。

ヴィエール・フィルハーモニック時代に合奏団とともに「大阪文化大賞」、松永みどり弦楽四重奏団時代に「モーツァルト協会賞」を受賞。現在、大阪芸術大学非常勤講師、四条畷学園音楽教室講師。

      

大江 浩志●フルート

モーツァルト室内管弦楽団のフルート奏者の大江です。なぜ、フルートかっていうと、いろいろありますが、ビゼーの「アルルの女」のメヌエットを聴いて吹きたくなったことです。

好きな楽曲はと聞かれて、この曲と答えることはあまりありません。しいて言うと、その時演奏している曲が好きな曲ですね。それは、「好き」だと思って演奏することで、より表現力が豊かになるからです。

尊敬する音楽家としては、スイスのオーレル・ニコレとドイツのカールハインツ・ツェラー、どちらもフルート奏者です。二人ともズバリ「音」が魅力です。そのせいか、私の演奏に対する考え方は、美しい色を目指すということ。美しい艶のある音色は、やはり表現するうえで大きな武器だと思っています。

プロになってほぼ32年になりますが、これまでで一番うまくできたという演奏は、いつだったかきちんと覚えていませんが、サマーミュージックフェスティバルでモーツァルト室内管弦楽団をバックに演奏したモーツァルトのフルート協奏曲第1番ト長調 K.313です。

この楽団とは1988年の東独演奏旅行以来の演奏活動となりますが、室内オーケストラで40年以上続いている団体はあまりないんじゃないでしょうか。公演の前の練習回数も少ないので、個人個人に力量がないと本番での演奏に対応できない。そういう意味では、楽団員全員プロであるという気持ちは強いと思いますよ。

私は、最近は指導する立場にもなってきていますが、いつまでも生徒に負けない演奏家でありたいと考えています。

 

<略歴>

1982年京都市立芸術大学卒業。1985年旧西ドイツ国立ハイデルベルク=マンハイム音楽大学卒業、同時に国家演奏家試験に最高点で合格。帰国後は、リサイタルや室内楽などで演奏活動を行う他、新作初演も数多く手掛ける。テレマン室内管弦楽団、大阪シンフォニカーを経て、モーツァルト室内管弦楽団首席奏者。

大阪にてリサイタル(3回)、ジョイントリサイタル(多数)、邦人作品を中心とした演奏会を2009年以降毎年開催。平成8年度《坂井時忠音楽賞》受賞。

 

現在、大阪音楽大学および相愛大学講師。日本フルート協会理事。

釋 伸司●第一ヴァイオリン・コンサートマスター

モーツァルト室内管弦楽団でコンサートマスターを務めさせていただいている釋です。この楽団の前はもっぱらバロックを演奏する楽団に所属していたのですが、ちょうど辞めてフリーだったときにある方からモーツァルト室内管弦楽団でコンサートマスターをやってみないかと声をかけられたのがきっかけ。もちろん、前から楽団のことは知ってはいましたが、表現方法が対照的だったことも興味をそそられた一因でした。結果、この楽団で約12年の演奏歴となります。

もっとも印象に残っている出来事は、ベルリオーズの「幻想交響曲」を演奏したこと。モーツァルトが看板の楽団だからこそ失敗できないという緊張感のもと、演り終えることができました。この楽曲の演奏を提案したのが私だったので、よけいに記憶に残っています。

ヴァイオリンとの出会いは3歳の時。ピアノも弾きましたが、この楽器を選んだのは音色の豊かさですね。本格的な演奏歴は35年あまりで、芸大在学中から演奏活動をしてきました。それでも、演奏が終わった後「うまくできた!」ということはまったく無く、もっとうまくあそこを演れたのにとか、違う弾きかたがあったのではとかという悔いが残ります。コンサートが終わるとホッとするんですけど、いつも後悔がつきまといますね。でも、プロである以上、つねに発展途上でありたいと思っています。たぶん、生涯そんな思いで演奏していくのでしょうね。

好きな楽曲はマーラーの交響曲3番、9番。複雑性、色彩感、ダイナミック感など涙が出るほどきれいなメロディに惹かれます。音楽家としては、ギドン・クレーメル、レナード・バーンスタイン、カルロス・クライバーを尊敬しています。それぞれ演奏家であったり指揮者であったりしますが、例えばバーンスタインは作曲家でもあり指揮者でもある多芸多才ぶりが素晴らしい。

個人的にはロマン派はもとよりバロックのソナタも演奏していきたい。来年は、バッハの「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」の全曲演奏に取り組みます。ぜひお楽しみください。モーツァルト室内管弦楽団の魅力は、なんと言っても主催者、門良一さんの一貫したポリシーでしょうね。モーツァルトを中心に古典からロマン派までの領域に対して、他の楽団であれば指揮者が代わったりするところを、一人で40年以上やられている。一人の音楽家の思いをわれわれ楽団員が受け止め演奏する。そのあたりをぜひ演奏会で味わってみてください。

 

<略歴>

 

京都市立芸術大学卒業。岩淵龍太郎、徳永二男、G.ボッセ、S.スタンデイジの各氏に師事。在学中よりテレマン室内管弦楽団に在団し、16年間コンサートマスターとしてサントリー音楽賞をはじめ数々の受賞に貢献し、95年退団。現在、いずみシンフォニエッタ大阪、マイハート弦楽四重奏団メンバー。京都フィルハーモニー室内合奏団、モーツァルト室内管弦楽団の客演コンサートマスター。アッサンブラージュ主宰。バロックからロマン派、現代曲、ポピュラーに至るまでジャンルにとらわれないユニークなコンサートを全国的に展開する他、音楽講座やレクチャーコンサートの講師としても幅広いファンを得ている。